FS事業(事業化可能性の調査)

供給・移載/製造業/機械

実施概要

支援先中小企業のニーズ・課題

櫻井鉄工株式会社は、紙箱や印刷物などの紙製品の打ち抜き機を製造販売している中小企業である。自社ブランドである「スーパープレス」万能打抜機を製品展開しており、これらの製品群は自社工場で、各部品を内製、組立、品質管理までを一貫して行っているのが特徴である。業界でも競争力のある製品である。

紙の専用プレス機械

今回対象となるワークは、主に紙箱や印刷物の紙製品であり、この打ち抜き機のプレスによって型抜きを行うものである(図1)。どの機種も経験のない素人やパート従業員でも十分に対応でき、安全性の高い装置であるが、必ず、材料の紙の投入と払出にオペレータが一人必須となる。この作業に特に技能は必要なく単純作業であり、以前よりこの作業の自動化・無人化を考えていた(図2)。

図1

図2

課題の解決方法

課題を解決する方法として、現在は人手で行っている専用プレス機械へのワーク(紙)の投入と払出を、ロボットを使うことによってその自動化を目指す。この自動化により作業者の削減生産性向上という効果が見込まれる。

FS実施内容

専用プレス機械へのワーク(紙)の投入・払出作業のロボットによる自動化においては、紙のハンドリングが課題である。紙のハンドリングには把持ミスや2枚取り、タクトの問題などがあり、ロボット用ハンドの構想と設計・製作、および協働ロボットによるハンドリングの実験をFSとして実施した。

  • 1.ロボットハンドの設計・製作
    紙のハンドリングは吸着で行うことにし、吸着パッドの種類、大きさ、数、エア系統などの検討を行った。空圧機器メーカPISCOにも協力いただき、紙や作業台を吸着した時の真空度などを計測して最適な吸着パッドの選定を行った。

テストの様子

ロボットには協働ロボットである川崎重工業のduAroを使うことにした。紙の投入・払出作業は、作業者が両手で交互に行うような動きをするため、双腕スカラロボットであるduAroは最適であると判断した。

全体図面

吸着ハンドの様子

  • 2.ハンドリング実験
    実際に作業者が紙の投入・払出作業をしている動画を詳細に観察しながら、ロボット(duAro)のティーチングを行い、ハンドリング実験を実施した。

ハンドリング実験の様子

紙のハンドリングは、作業者の動きを模して概ね良好な動作ができた。紙の吸着やタクトにも大きな問題はなく、作業者の約1.5~2.0秒タクトの動きが実現できた。

得られた知見・成果ならびに事業化への課題

今回のFSでは、ロボットによる紙のハンドリングという課題に対して、吸着ハンドの設計・製作をし、実際のワークである紙のハンドリング実験を行った。
協働ロボットduAroを使うことで、作業者が両手でやっている投入・払出動作を同じような動きで実現できた。また、タクトも現在作業者が行っている動画と同等の時間で行うことが確認できた。紙の2枚取りも今回は発生することがなかったが、今後さまざまなワーク(紙)を試行する必要があると思われる。
今後の実用化に向けての課題としては、プレス機械への投入時の紙の位置決めをどのように行うかという課題と、最後の1枚の紙を吸着する際に底吸いが発生し、作業台を吸着してしまう問題があった。

FS実施後の状況、今後の展望

FS実施後、先の課題の解決手段の検討と、導入に向けての構想設計を実施した。 プレス機械に紙を投入する際の位置決めは、ハンドを工夫してメカ機構によってプレス機械側へ押し当てるような機構とティーチングを行うことで解決すると思われるが、紙が柔らかい時のさらなる課題もあり、ワークの種類などの検証が必要である。底吸いの問題は、紙と作業台の間に隙間を作れば大丈夫であることがその後の実験で確認できた。

導入に向けた構想図

本案件は(公財)大阪産業局のマッチングナビゲータからの紹介案件であり、以前よりこの作業の無人化を切望していた櫻井社長の考えを、今回、協働ロボットを用いて実現できたことは、今後の実導入に向けて大きく期待できるところである。実際、実験動画を見ていただいたところ非常に興味を持っていただき、5月に当社で導入に向けた検討会を実施することになっている。今後、実導入が進めば専用機とロボットのパッケージで商品展開をすることができ、櫻井鉄工にとっても当社にとっても有益な展開となるだろう。

SIerとしてFS実施後の事業展開

ロボットシステムインテグレータの案件は一品一葉のシステムが多く、仕様のあいまいさや、自動化の難易度によってはなかなか利益の出ない案件も多い。すでにこのプレス機は全国で480台ほどが稼働しており、毎年15台ほど販売している実績がある。そういった中、今回のFSで取り組んだ専用機の付帯設備としてのロボットシステムは、いわゆるリピート品に近いものになり、利益が出しやすく、数量が出ることが期待できる。
また、専用機メーカおよびその導入ユーザにとっても有益なシステムであり、実用化した際は、安定した販売が可能なロボットシステムになることが期待できる。

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