FS事業(事業化可能性の調査)

その他/サービス業/宿泊

実施概要

支援先中小企業のニーズ・課題

日本屈指の温泉街、道後温泉。
道後温泉というブランドもあり、コロナ禍であっても全国からの来客が多数いらっしゃいます。
ホテル椿館は明治レトロな趣のある宿で、お客様の評価の高い人気のホテルになっており、宿泊者は、温泉はもちろん、食事でもゆったりと過ごしたいと考えます。
一方でコロナ禍のため、人との接触を極力避けたいと考える宿泊者もいます。

ホテルはお客様満足度向上とサービスの運営上、ビュッフェレストランにて常にスタッフが混雑度を注視し、混雑時は場合によっては入場を制限することがあります。
しかし、お客様からは待たされず、またゆとりのある時間帯をリアルタイムに知りたいという要望があり、何かいい方法がないか、と模索されていました。

■ホテルの戦略の一環として…

「売り上げを伸ばすためにお客様をできる限りお招きしたい…」
「宿泊者は、コロナ禍で混雑を避けたいと望まれているので、まずは混雑する状況を無くしたい…」

■お客様を安心させ、当ホテルブランドを守る大切さ

ブランドを大切にする企業は、「対策をしている」という「思いをカタチにする」ということが必要になります。
いくら裏方で労力をかけ、混雑対策をしていても、宿泊者にその事実(裏方の労力)が伝わらなければ、そのまま見過ごされてしまうからです。

例えば食事を例に…
「当ホテルでは混雑・三密回避のために混雑回避システムを導入しています」
これは「おもてなしのカタチ」の一つです。

提供者にとっては当たり前の事でも、サービスを受ける者にとってそれらの情報が伏せられると、例えばこう思われるわけです。
「混雑・三密対策はしていないんだ…」

「見える化」は付加価値ではありません。必須対策です。

これらの事や、ブランド戦略を考える上でも、ホテル様は有効な混雑対策を求められていました。

課題の解決方法

課題の解決方法として、弊社はまず状況把握に臨みました。

  • ・宿泊数に対してビュッフェレストランのキャパシティーは限られ、変更することはできない
  • ・ビュッフェレストランにはホテルスタッフが常駐しているものの、混雑度をお客様に事前案内できず、入口で待たせてしまうことになる。

これらを踏まえ、以下の手法を考えました。

■宿泊者に夕食・朝食に来てもらう時間をずらして混雑を避けてもらう、という手法
リアルタイムのビュッフェレストランの混雑情報を提供し、お客様自身の判断で夕食・朝食時間をずらしてもらう方法。

■プライバシーの保護

宿泊施設において、カメラでのセンシングは非常に嫌われます。
ゆっくり楽しみに来ているにもかかわらず「監視されている感」は、宿泊者にとってストレスでしかないからです。
中には、「写真など撮影して個人情報を裏で取っているのでは…」と疑われるお客様もいるという話を聞きます。
「今後あのホテルは使わないようにしよう…」と思われてしまいますと、ホテル側にとっては死活問題となります。

カメラを使用してのセンシングはできないと判断しました。

上述を踏まえ、プライバシー保護を前提に「非カメラ」によるセンシング方法を選択し、開発していくことを決定しました。

■ソフトウェアの設計

リアルタイムによるセンシングを反映させる為の機能はもちろんの事、あらゆる表示媒体を想定(大型のデジタルサイネージ、PC、タブレット、スマートフォン)し、設計しました。
管理者側のシステム管理画面もあらゆる表示媒体(PC、タブレット、スマートフォン)で操作できるよう配慮しました。

■人間センサー(スタッフ自身がセンサーになる)を取り入れる

人間の感覚を介入させる。
本IoTシステムは、センサーに頼りっきり…という事をさせない工夫をしました。

簡単に人間の感覚を介入させる事が出来るよう設計されています。
それは、センサーの感覚より、人間の感覚の方が優れている場合もあるからです。

例えば…
団体客が退出する場合などはスタッフが事前に予見し、「空いている」とメッセージを配信させる事が出来ます。

このような臨機応変はセンサーにはできません。

私たちはこのことを「人間センサー」と呼んでいます。

FS実施内容

当初は、ビュッフェレストランの各テーブルにIoT機器を設置しセンシングする予定でしたが、予算がかさむことなどの理由により、出入口にセンシング機器を設置し、その出入りの通過人数をカウントすることによりその施設の混雑度を計測するという方法に変更いたしました。

センシング機器およびシステムの製作について

■センシング機器の製作で重点を置いたこと

・センシング機器の外見
物々しいセンサーは、それを見る人によっては威圧感を与えます。
加えて、カメラのような外観では「非カメラ」を目指して制作しているにもかかわらず誤解を招き、このセンシング機器の特徴をスポイルしてしまいます。
できる限り小さく、かつ威圧感を与えないことを念頭に、センサー機器の入れ物の選定、およびデザインで製作しました。

・センシング機器の設置の容易さ

センサーは、地上高 90センチ前後の設置が望ましいのですが、非常に手軽に設置が可能であるため、万が一不具合が生じた場合でも、簡単に取り外すことが出来メンテナンスが可能な仕様としました。

■システムの設計で重点を置いたこと

(管理者側)
・システムの使用者はホテルのスタッフで、センシングの専門家ではない
これらを踏まえ、絶対に迷わない、かつネットワークの機能を生かし各施設の状況を一度に把握できる設計を目指しました。
かつ、センシングデータを時系列でログを取り、過去の施設の混雑パターンを見ることが出来るようにしています。

【ビュッフェレストラン_Tsubaki_出入口】

■実際にセンサー機器を設置し問題が発覚したこと

(センサー機器の設置自体)

センシング機器は、それほど不具合は発生しませんでしたが、機器の設置場所には苦慮しました。

地上90センチ前後に設置するという事で、設置は簡単にできるのですが、小さくても目立つのはもちろん、設置方法に頭を悩ませました。

当初は、このセンシング機器自体の重量が軽いことから、強力な両面テープがついた面ファスナー(マジックテープ)を使用し固定しました。
設置当初は、一旦張り付けると剥がしようがないほど強力で、センサー機器が落下することはないと踏んでいましたが、10日ほどで落下してしまいました。

機器が軽い重量であっても、長時間力が掛かり続けると剥がれてしまうという事が発覚し、新たな解決策を模索しました。
地上90センチ前後に設置すればよいので、小さい机を設置し、解決することが出来ました。

(ビュッフェレストランの出入口は間口が広い)
横方向からのセンシングにおいて、複数名が横に並んでの入退場は厳しい環境である。
ビジネスホテルではないので、一人での入退場は逆に少ない状況。
幅を狭めることはできないので、入退場する人々を早い段階から複数名であることを早い段階からセンサーに認知させる為に設置の角度を変更したりするなどして、精度の向上を図りました。

(センサー設置に関しての今後の課題)

設置自体は容易にできますが、人の手の届くところにセンサーを設置することになりますので、人がセンサー機器に接触する問題も出てくると思われます。
それらを解決させる為に、更なる小型化などが課題となっています。

得られた知見・成果ならびに事業化への課題

■技術的な知見

安定性のあるセンサー機器を使用して臨んだため、技術的な新たな知見はそれほど多くはありませんでした。

ただ、横方向からのセンシングとなりますので、間口の広い施設などで、複数名が塊となって入退場されるとセンシングの誤差が出てきて問題になると思われます。

今後は複数のセンサーを設置するなどして、間口の広い施設でも問題なく精度を出せるように改良が出来ればと考えております。

■「センサー機器と人」の関係の知見

本センサー機器は、宿泊客に見える位置に設置するものです。
宿泊客がそのセンサー機器を見てどう思われるのかも配慮し設計しましたが、小さいプラスチックの箱からアンテナのようなものが出ていると、「何だろうか…」と思われるのは必至でした。
入浴施設程センシティブではないものの、やはり気になされる方はいらっしゃいます。

これからの時代、IoT機器は人の周りに増えていきます。
「センシング機器を小さくして隠す」という方法もありますが、「安らぎや安心感を与えるデザインを施し、積極的にセンシング機器を見せる」という方法も考えられます。

今後の課題として、このIoT機器が人と自然に馴染むものになるよう更なる改良を重ねたいと考えております。

■成果

(これまでは…)
これまでホテル側は、宿泊客がチェックインをする時に、「ご夕食のご予定時間は何時ごろでしょうか」という形で確認を取り、希望時間が混雑している場合は、他の時間をお勧めする…という形式をとられていました。

お客様にとっても、混まない時間帯に振り分けてくれるというメリットはあるものの、やはり予定時間に縛られるというデメリットもあります。

フロントスタッフのチェックイン時の手間もかかります。
フロントのチェックイン業務は煩雑で短時間で大人数を裁かなければならない状況もあります。もちろん宿泊者を待たせる要因の一つになり得ます。

(システムの設置後)
フロントでスタッフがお客様の夕食の予定時刻を聞く必要もなくなり、業務の効率化が出来たと喜ばれています。

宿泊者もリアルタイムに表示されるビュッフェレストランの混雑度を見て、夕食会場へいくタイミングを自身の判断で出来るようになり、顧客満足度が向上したという報告を戴きました。

ホテル業務の効率化はもとより、顧客満足度を上げることが出来たことに対して喜びの感想を戴くことが出来ました。

FS実施後の状況、今後の展望

■センシング機器の導入について

センシング機器は、今回の実証実験で、弱点の克服、改良が進みました。
ただ、これらの機器は高価なものとなり、低予算で導入するのには少々ハードルが高い状況です。
現在コロナ禍で、宿泊業は厳しい状況にあるというのも考慮し、まずは、上述しました「人間センサー(スタッフが各施設の混雑度を目で見て把握し混雑度の情報発信をする)」によるシステムの使用をして戴くことになりました。

人間センサーによる運用を経た後、センシング機器による施設の混雑度の自動発信へ移行したいというご要望を戴きました。

■今後の展望

(他のシステムとの融合)
混雑度把握システムを混雑度だけで使用するのはもったいない、というホテルスタッフからの意見がございました。
要するに、ホテルスタッフ間で混雑情報の情報共有だけではなく、例えば…それらの情報にTwitterのような一言の情報を書き込み、ホテル業務の効率化を図りたいというものです。

どれも弊社が得意としている「情報共有」をベースにしたシステムで作成可能であり、この混雑度表示システムと融合させビジネス展開を目指しております。

SIerとしてFS実施後の事業展開

■混雑度監視システム+業務管理システム

「混雑度監視システム+業務管理システム」の融合は、SIerとしてだけではなく、業務に携わるスタッフにおいても効率化が望めます。

人員配置の最適化などです。
ホテル内の、Aレストランが混んでいる、Bレストランは混んでいない…という状況が生まれたときに、Aレストランのスタッフが、Bレストランの応援へ駆けつけることが出来る…という使われ方です。
これは一例にすぎません。

センシングにより、施設内の滞在人数が刻一刻とデータとして蓄積されていきます。
それらのデータを使用し、将来的にマーケティングとして活用することも可能です。

さまざまなシステムと融合させ、それが常識になるように仕向け、事業展開が出来るようになればと考えております。
かつ、「非カメラ」でありプライバシーが保護されている、という強みを生かして、事業展開できればと考えております。

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