FS事業(事業化可能性の調査)

複合的技術未開拓分野プロジェクト 事例

AI、IoT技術活用を得意としソリューションを提供するSIer企業の
「未開拓分野へ 複合的なAI・IoT技術の活用」をプロジェクトとして支援し、F/Sを行うことで、
変化を続ける産業構造に適応できる新たな導入モデル化を促進し、
導入ノウハウを蓄積・共有することを目的に生産性向上に取り組む中小企業を対象に実施しました。

製造業/電子機器

実施概要

支援先中小企業のニーズ・課題

感染症による事業影響が、無視できない状況になってきている。新型コロナウィルス(以下、コロナ)の世界的な影響は、改めて述べるまでもない。テレワークが当たり前に呼びかけられ、「新しい日常」が呼びかけられている。職場環境の改変も求められ、各企業はコロナ禍による経済的対応だけでなく、「新たな日常」への対応まで行わなければならなくなっている。
コロナの影響ばかりが大きく取り上げられているが、従来から蔓延していたウィルス病害の経済的影響も存在する。ユーザー企業は、かつてインフルエンザにより多くの従業員が休職する事態が発生し、納品計画が大きく遅延した事案も発生した。事業体で感染症によるクラスターが発生すると、事業体だけでなく取引先にも大きな影響を与え、取引信用にも関わるため、事業体は大きなダメージを受ける。このように、コロナ以外にも感染症で事業影響を受ける事態は起きている。ユーザー企業はSIer企業が依頼した品も製造しており、感染症による製造遅延の影響を受けたことがある。
ものづくりに関わる業種は、実際のモノを相手に作業するため、テレワークには不向きな業態となっている。埃や不純物の混入を避けなければならない製造物の場合、管理された室内での作業が必須となる。また、自動化に限界のある製造物の場合、作業員が多くの工程に関わるため、室内に多くの人員の配置が必要になる。コロナ対策で求められる3密を避けにくい状況にある。この状況は中小企業に見られる傾向と推察する。

課題の解決方法

ウィルスは、微生物よりも小型で、DNAとタンパク質の外殻から構成されている。生体活動に必要な、酵素やエネルギー発生を行うミトコンドリア等の生体機能は有しておらず、単独での生体活動は行わない。増殖は、生体活動を行う寄生先(宿主)が必要で、ウィルスは宿主に入り込み、宿主の生体機能を利用して自己増殖し、一定量増殖すると宿主の細胞から飛び出して、他の宿主に向かい拡散する。
感染症は、ウィルスや細菌により発生する。人体内でこれらが増殖し、下痢や発熱、食欲不振や肺炎といった障害を起こす。ウィルスや感染症は目に見えないため、これら病原体が社会に広がる様子は、発症した宿主(人)の様子でしか容易には確認できない。このため、弱毒性のウィルスは、知らない間に人と共生している場合もある。動物細胞に一般的にみられる、ミトコンドリアも元は別の生物体が寄生したものとする仮説もある。
コロナ対策で求められている3密は、密閉・密接・密集が重なるとクラスターが発生しやすくなると考えられており、感染そのものを予防するものではない。感染症の発生は、感染源・宿主・感染経路の条件が揃うと発生するとされる。コロナやインフルエンザなどのヒト感染症の場合は、宿主は人になる。コロナやインフルエンザ等の場合、飛沫や空気を媒介して感染が広がる。この時に重要なのは、空気の流れになる。換気や空気流動により、感染経路が制限され、感染の拡大を制限させることが期待できる。これは、感染者が室内にいたとしても、換気が十分に行われれば、部屋内の空気内ウィルス密度は低くなる事を意味する。また、空気の流れが発生していれば、空間内に局所的にウィルス密度が高くなる箇所は少なくなる。さらに空気の流れ方向が把握できれば、空間への空気の流入部から排出までの空気流動が適正な方向に流れているか把握が容易になる。

本提案は、換気や空気流動をモニタリングするセンサユニットを提供する。これにより、適切な換気管理および空気流動管理を居住空間に提供し、感染症の拡大防止の一助とする。また、感染症予防を必要としない時は、作業現場が作業に適切な環境であるかを提示し、作業性の向上に役立てる。

施設では、発熱者のスクリーニングによる入場者の制限が普及し始めているが、この手法だけは感染防止には不十分となる。これは、コロナの感染プロセスのうち、ウィルス排出が多くなるのは、発症の2日前であることが明らかになっているためである。万一、施設利用者の中に未発熱もしくは未発症者が入り込んだ場合、クラスターや感染拡大を防止する手段は、マスク着用、飛沫の遮蔽、ワクチン以外に、環境管理が有効な手段となる。

感染症の病気の進行

環境管理としての、換気および空気流動の監視には、CO2濃度と風速・風向、温湿度のモニタが有効と考える。
人の密度が高いもしくは、換気が弱い場合は、CO2濃度が高くなる。逆に、CO2濃度が低ければ、換気が十分実施できていたり、人の密度が低いと判断できる。
CO2濃度は、部屋の換気量や換気回数の測定にもよく使われる測定値であり、人数推定の実例もある。CO2濃度の把握によって、3密のうちの密閉と密集の把握が可能になる。
空間内に汚染空気が高密度で存在していたり、空間内の空気循環が悪ければ、換気量が多くても、感染経路を低減したことにはならない。空気の流れおよび流れ方向が判れば、空気循環の適正や、循環方向の適正も把握できる。例えば、人が会話を行うミーティングエリアの空気が、周辺の執務エリア方向に流れる空調配置である場合、クラスター発生のリスクが高いと判断できる。この場合は、空気の流れ方向を変えるか、配置を変更することで、リスクを減らすことが可能になる。 提案する、換気モニタは、CO2センサおよび気流センサを備え、さらに3D風向センサを備える。これにより、換気や空気流動管理が適切に行われているかを判断し、ユーザーに情報を提供する。
さらに、感染症の中には、居室の湿度管理に有効性が見出されている。温湿度センサにより、感染症の発生環境を防ぎつつ、適正な換気アシストが可能になる。

本提案は、感染症対策を主眼に置いている。このような商品提供を行う場合、流行や季節性を持つ特性は、事業の安定性からはマイナスになる。本提案のシステムは、感染症対策が不要な時期であっても、環境による作業効率化の管理に活用可能である。
建築物におけるCO2濃度監理は、1,000ppm以下の環境管理が法令で定められている。一方、作業および学習効率の面から見た、CO2濃度の適正範囲は、800ppm以下であることが研究で明らかになっている。午後の会議が眠くなるのは、満腹感や怠慢ではなく、会議室のCO2濃度が高くなっているのが原因である場合もあり得る。このため、通常時であっても、800ppm以下にCO2濃度を管理すれば、事業効率の向上に役立てる事が出来る。
さらに、本品に輻射熱センサを加えると、暑さ指数(WBGT)や、快適性指数(PMV)も求める事ができる。PMVが仕事効率および学習効率に影響を与える事も判っており、同様に環境管理を行う事で、事業効率に好影響を与える事が可能になる。

FS実施内容

換気モニタは、CO2センサ、温度センサ、気温センサ、および気流センサを備え、さらに気流センサとして3D風向風速センサを備える。これにより、換気や空気流動管理が適切に行われているかを判断し、ユーザーに情報を提供する。
さらに、感染症の中には、居室の湿度管理に有効性が見出されている。温湿度センサにより、感染症の発生環境を防ぎつつ、適正な換気アシストが可能になる。

これまで開発してきた3D風向センサは、水平設置型は水平方位のうち検出精度が得にくい方位があること、垂直設置型は俯角検出精度が全く得られない事などの問題を抱えていた。さらに、プローブ形状が影響して、風速値の同時計測の精度が得られず、風速値を同時計測するには、風向センサとは別に風速センサの設置を必要とした。本課題実施にあたっては、これらの問題を解決するため、以前より解決策として基礎試験を行い、特許出願(特願2020-054687)を行っていた技術をセンサモジュールに仕立てて活用することとした。
基礎試験で風向検出性が確認されたプローブ形状2種に加え、特許出願時に実施例として用意したプローブ形状1種の、合計3種のプローブ形状の3D風向センサをセンサモジュールに仕上げた。Y字形状のHWD-20V-ONE-Y、Y字に対して内側にプローブを折り曲げた形状のHWD-20V-ONE-X、T字形状のHWD-20V-ONE-Tの3種となる。この3種を評価した結果、HWD-20V-ONE-Tが最も検出特性が良く、続いてHWD-20V-ONE-Yが良い結果を示した。HWD-20V-ONE-Xは、当初作成した風向変換アルゴリズムでは誤検知が多発したため、アルゴリズムのさらなる改良が必要と判断した。

このため、本課題ではHWD-20V-ONE-TおよびHWD-20V-ONE-Yを気流センサとして活用することとした。なお、この2機種は、風速検出をさせても、指向性誤差が実用レベルまで得られていることを確認したため、最終的な換気モニタには、風速センサを搭載する必要がなくなった。これにより、当初想定よりも製造コストの低減が見込まれた。

事業所の一般作業者には、本体の液晶表示にリスクレベルを表示することとした。リスクレベルは、CO2濃度、風速、温度、湿度の4要素からリスクレベルを算出することとし、液晶表示器に状況を示すとともに、危険レベルの場合はブザー鳴動により周囲に知らせる機能を備えた。風向は、使用者に流れ方向を表示させることにより、空気の流れ方向の改善につなげる目的としており、感染リスクレベル算出には活用していない。
計測値は、換気モニタに内蔵するSDカードに記録するほか、FTPによってサーバへの伝送機能を備えさせたため、PCやスマホアプリでの遠隔モニタリングにも対応可能とした。

上記換気モニタに加えて、風向表示のみを行う、簡易風向モニタも試作した。ホルトプランで開発した風速センサのうち、HWS-19-ONEとHWS-19-DISには1軸方位検出機能を備えさせており、これを液晶表示に表示して、簡易の風速・風向計とした。事業所の受付など、外来からの不特定多数の来訪者に対応する場面などでの活用を想定した。

なお、新型コロナの影響等により、半導体の入手に問題が生じ、装置の準備に時間を要した事、およびコロナ禍の状況であるため、感染拡大防止の観点から、現地訪問や開発行為に様々な制約が発生した。このため、実証に十分な時間を得られていない。今後、ユーザ企業の協力を得て、検証を継続していく。

得られた知見・成果ならびに事業化への課題

ヒアリングの結果は以下の通り:

1)液晶部分
→表示の切り変わりが早すぎる。(何が書いてあるのかじっくり見れない)
→ゆっくりにする
→ボタンで表示内容の切替ループを行わせる

2)表示内容
→Temp・Humid・WSpd・WDir・WAngl の意味が分からないと思います。
研究所レベルに設置してもらうならアリですが、一般使用には適さないです。

3)基板上のLED
→実機では、点灯・点滅は見せるのか?
→なんで点灯・点滅してるのかの意味合いを持たせた方が良いですね。
→筐体変更して、点灯・点滅は見せないなら、それも選択肢として有りかと思います。
→危険度を「筐体の発光」で知らせるのも有りですね

4)センサー部分
→外気に触れないといけない条件があるので、いっそのことキャチーにキャラクター化してしまう。

5)筐体サイズ
→程よいサイズ感だと思います。
→背中に細工して、「壁掛けフック」に対応できるようにすれば良いかもしれません。

本事業の範囲内では、汎用のキャラクタ液晶での表示にとどまった。また、クラウドサーバへの送信機能は備えているものの、スマホなどでのモニタリングアプリまでは開発していない。さらに、筐体は3Dプリンタ出力用に最適化された設計としており、量産化に最適化されていない。
事業化に向けては、以下の改良が必要になる。
・表示能力の向上
・モニタリングアプリなど整備による、システム化
・筐体設計および構造設計の、量産化対応

FS実施後の状況、今後の展望

1)換気モニタそのものの事業展開可能性
新型コロナ感染症の感染拡大が続く中、経済との両立を図るため、また医療崩壊をさせないためにも、本品の様な機器がなるべく早く上市できる事が望ましいい。一方で、ワクチン接種による集団免疫が形成されれば、感染リスクはパンデミックから脱すると期待されている。パンデミック終結後の本品の利用価値は相対的に低下が予想される。そのため、本品はアンダーコロナではなく、アフターコロナを見据えた品としての思慮が必要になる。そのため、本機は、インフルエンザ等の従来感染症もターゲットとし、さらに平時は作業効率を高める環境に誘導するプラス機能を持たせる。これにより、アフターコロナで価値を残存させつつ、新たな感染症や変異株への準備機器としての導入を目論む。
日本の飲食店数は67万店あるとされる。事務所数は、考察をシンプルにするために、中小企業数を用いることとし、2016年時点で357万社存在する。各々、2部屋ずつ建物を利用していると仮定する。さらに学校数は63,042校(2019年統計)存在し、仮に教室が各30室用意されているとする。この数値には、幼稚園は含まれるが、塾や予備校は含まれない。これらの数値を合わせると、1037万部屋と仮定できる。
これらの部屋の3%に導入されるとすると、30万部屋分、30万台の市場があると想定できる。本モニタの販売価格を6万、装置寿命を10年と仮定すると、180億円/年の市場規模と予想できる。この試算には、工場や大手企業のオフィス、住居や病院などを含めていない。

SIerとしてFS実施後の事業展開

換気モニタや簡易風向モニタは、今後事業化を目指していく。 現段階は、市場性の確認や、投入市場のリサーチであり、マーケティング段階にある。

本課題内で開発した技術要素のうち、3D風向センサの販売は開始した。政府の脱炭素社会に向けた方針を受けて、様々な企業が活動を開始しているが、主に建築関係の企業から問い合わせや購入意思を受けている。現在、初回量産を進めている。

その他特記事項

●他機関での活用
換気モニタそのもののテスト販売は行っていないが、要素技術の風速センサや3D風向センサを販売している。

・国立研究開発法人産業技術総合研究所

上記でセンサ提供した国立研究開発法人産業技術総合研究所では、国立研究開発法人 日本医療研究開発機構との共同研究において、気流制御による感染予防の研究を実施した。この研究課題において、ホルトプランから風速センサ2機種、風向センサ2機種を有償提供している。この中には、HWS-19-ONEとHWS-19-DISに加え、HWD-20V-ONE-Tが含まれる。
なお、同研究は新型コロナウィルス対策の研究課題であり、概要は以下の通り。

事業名: ウイルス等感染症対策技術開発事業
課題名: 高感染リスク空間における気流制御によるゾーニング効果の検証
課題概要:(日本医療研究開発機構Webより)
感染症を防止する手法として、弱い気流を適切に制御することにより、空間を区切ったり、汚染空気を吸引したりするものがあります。しかしながら、その効果を確認するために必要な微風速、特に三次元風速の測定は容易ではありません。そこで、簡易型三次元気流センサ及びその校正手法を開発することにより、気流制御による感染症防止手法の効果の検証法について検討します。

成果発表:今後、順次開示を予定するとの事。

備考:本課題の実施内容の一部を、産総研と情報共有している。

●知財
簡易風向モニタに用いた風速センサHWS-19-ONEとHWS-19-DISには、1軸の風向検出機能を備えさせている。この風向検出に用いている技術について、特願2016-231556として特許出願していたが、本事業の実施期間中に、特許第6846025号として権利化した。

●試作品等の製作物

目的 換気モニタ
用途 ユーザ企業等での試験運用
機能 CO2センサ、温湿度センサ、3D風向風速計を備え、感染リスク算出・表示や、風の流れ方向の表示をさせることにより、感染クラスターの発生リスクを低減させる。
目的の達成度 機能評価を行うには、一通りの機能を備えている。
一方で、商品としては改良が必要である。
製作物の現状 ユーザ企業および、ユーザ企業のサポート企業で3台運用・保管中。
SIerで、3台を試験運用中。

●試作品等の製作物

目的 3軸風向センサ
用途 換気モニタへの搭載
機能 3軸の風向検出および、風速検出
目的の達成度 HWD-20V-ONE-Tについては、商品提供可能レベル
HWD-20V-ONE-Yについては、検出アルゴリズムに改良・最適化が必要
HWD-20V-ONE-Xについては、最適な検出アルゴリズムの開発および検出性の達成見極めが必要
製作物の現状 換気モニタに搭載もしくは、SIer企業で試験後に保管中

●試作品等の製作物

目的 簡易風向モニタ
用途 換気モニタの補助運用品
機能 1軸の風向検出および計測結果表示
目的の達成度 機能評価を行うには、一通りの機能を備えている。
一方で、商品としては改良が必要である。
製作物の現状 SIer企業で試験後に保管中
※本品の制作材料は、SIer企業の在庫品を用いており、補助金予算を使用していない。
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