FS事業(事業化可能性の調査)

複合的技術未開拓分野プロジェクト 事例

AI、IoT技術活用を得意としソリューションを提供するSIer企業の
「未開拓分野へ 複合的なAI・IoT技術の活用」をプロジェクトとして支援し、F/Sを行うことで、
変化を続ける産業構造に適応できる新たな導入モデル化を促進し、
導入ノウハウを蓄積・共有することを目的に生産性向上に取り組む中小企業を対象に実施しました。

建設業/建築

実施概要

支援先中小企業のニーズ・課題

建築現場では、掘削工事や舗装など外構工事、建築物本体の加工作業などで、粉塵が発生する。さらに、解体や改築工事の際は、建築構造物の破壊を伴うため、多くの粉塵が発生する。工事中は、土壌が露出している事が多く、出入りする車両、特にダンプトラックなどは、土壌を車体に付着した状態で走行するため、近隣の道路に粉塵を落下させる場合がある。一方、建築現場周辺では、環境問題に発展する場合があり、騒音や振動のほか、粉塵の流れ込みによる被害が問題になる事がある。
これに対し、防音壁や防音シートなどによる工事現場からの流出防止や、水散布による粉塵飛散防止が行われる。水散布は、粉塵発生個所をピンポイントで対処する事が可能になるがテクニックを要し、作業者の技量によって効果の差が大きく出る。現場を出入りする車両は、車体や車輪の洗浄により、粉塵の飛散防止に努めている。このような対策を行っていても、一般に持たれる工事現場のイメージもあり、工事業者は周辺に気を遣う。騒音計を設置し、周辺に環境影響を示すのが、その一例である。
ユーザー企業のツバサ建業は、これまで阪神地区で数多くの解体工事に携わってきた。粉塵対策は常に事業推進の悩みとなっている。

課題の解決方法

社会の情報化の進展に伴い、様々なセンサが安価になってきている。IoTやスマートX、DX、Society5.0などの今後のデジタル社会への進展により、この傾向は益々進展する。粉塵検出センサも、以前に比べて安価なデバイスが提供されるようになってきている。健康被害への懸念もあり、PM2.5の検出センサは、コンシューマ機器向けも含め多くが出回っている。欧米では、PM2.5に加えてPM10といった粉塵径の大きい粉塵指標が存在し、その検出を目的としたセンサも市販されている。
そこで、粉塵センサに加えて、風向風速センサを組み合わせ、粉塵の飛散状況の把握および予想を行うシステムを提案する。これにさらに熱中症予防のための暑さ指数(WBGT)検出センサを加える事で、作業者の健康管理にも寄与する。
これで得られた情報は、工事現場の作業者に向けて情報提供され、粉塵対策の効果や必要性、状況の把握に役立てる。また、水散布の技量向上の指標にも生かせる。他方、周辺居住者に向け、粉塵状況を数値もしくは指標(レベルゲージ等)で示すことで、近隣への理解促進に寄与する。

本装置の導入によって、以下の経営効果を見込む。
●粉塵対策の効率化による、コスト削減効果。
●適切な粉塵管理による周辺被害の最小化。
●近隣への状況発信による理解促進により、トラブル対応などの間接コストの最小化。

本提案と同様の品は、市販品が存在する。しかし、定価が76万円とやや高額で、風向風速計も付属させると120万円強となる。また、従来の計装機器の思想で開発されているため、インターネットとの親和性が乏しい。ほかにも、インターネットとの接続を想定した機器も市販されているが、約40万円のPM2.5センサユニットに通信ユニット・防水機構を加えた品となっており、50万を超える売価設定で売買されている。
本提案の主体となる粉塵センサは市販品だが1万程度の部品コストと安価で、風向風速センサ、暑さ指数センサはSIer保有技術でかつセンサ売価1~3万円の品を適用する。現場情報をサーバ等の上位システムに伝送する技術は、SIer提案者が保有する、快適性モニタや源泉モニタで構築してきた技術を転用する。これらを組み合わせて、従来よりも低コストで高機能なIoT型センシングデバイスを提供する。
本提案は、粉塵センサのみでも一定の効果が期待できるが、より高い効果を期待するには、風向風速センサが必要になる。これは、粉塵センサのみでは、特定場所のポイントデータのみとなるが、風向風速センサを加える事で、2次元の面的データを補完・生成可能になるためである。
まずは、粉塵センサと風向風速センサを組み合わせた計測器を準備し、計測有効性を確認する。計測有効性が確認できた後に、通信機能を加えて、IoTデバイスとして上位システムと連携し、関係者に情報提供を行う。

本提案は、建築現場での試行を行う。しかし、粉塵や風向きによる周囲居住者への配慮は、建築現場以外にも、畜産施設(豚舎、鶏舎、牛舎など)、工事材料施設(合材工場、生コン工場など)、砕石場、建築資材置き場、リサイクル施設、粉体工場などへの適用が考えられる。

FS実施内容

粉塵、振動、風向・風速のセンサを備え、内蔵SDカードに計測記録を保存するのに加えて、通信経由でサーバにデータ伝送できる粉塵モニタ装置を開発し、解体現場で供試した。
本提案の主体となる粉塵センサは市販品だが1万程度の部品コストと安価なSensirion社製のSPS-30を用いた。本センサは、英国発の欧州規格MCERTS認証を取得しており、PM1.0、PM2.5、PM10の計測が可能になっている。風向風速センサはホルトプランの自社製品を利用する。振動センサとして加速度センサを用いるが、当初予定では計測メイン基板に実装された9軸センサを活用する予定であったが、新型コロナの影響によりデバイスの入手見込が全く立たない状況となったため、急きょ外付けモジュールを搭載する様に設計変更した。
現場情報をサーバ等の上位システムへの伝送は、当初は920MHz帯のWi-SUN FANを用いる想定だったが、メーカからの販売開始が遅れたこと、本格量産は2021年3Q以降が予定されていることなどから、今回は開発済みのWi-Fi基板を活用した。
本提案は、粉塵センサのみでも一定の効果が期待できるが、より高い効果を期待するには、風向風速センサが必要になる。これは、粉塵センサのみでは、特定場所のポイントデータのみとなるが、風向風速センサを加える事で、2次元の面的データを補完・生成可能になるためである。現状保有する風向センサは、微風速域を使用環境としており、1m/s.以上の環境下では方位の検出性が得られない。そこで、1軸風向検出機能を備えるHWS-19-ONEを2組使用し、風向検出軸を90度の交差をもって配置し、これで得られた2軸ベクトルから風向を算出する方式とした。防水のために、風速センサ本体には、UV硬化型耐水コートを施した。電源には、20Wの太陽電池を用い、9Ahの12Vバッテリで補完する形をとった。
なお、ユーザ企業からは、騒音検出機能も要望されたものの、将来実装とし、設計上は騒音検出用のマイクが装備できる構造として設計した。

粉塵モニタ本体

粉塵モニタ本体(上)と、電源部分(下)

ユーザ企業への、現地ヒアリング

設置中の様子

設置中の様子

なお、新型コロナの影響等により、半導体の入手に問題が生じ、装置の準備に時間を要した事、およびコロナ禍の状況であるため、感染拡大防止の観点から、現地訪問や開発行為に様々な制約が発生した。このため、実証に十分な時間を得られていない。今後、ユーザ企業の協力を得て、検証を継続していく。

得られた知見・成果ならびに事業化への課題

ユーザ企業とのディスカッションの中で、計測値を示すだけでなく、何かしら価値を与える機能が必要との意見を頂いている。それにより、導入インセンティブが強くなり、より経営や採算性への効果が得られやすくなる。
今後は、ユーザ企業とも共同で、どのような機能を加えれば価値向上につながるか検討しつつ、商品化につなげていく。

なお、粉塵の基準が国から示されており、以下の数値が設定されているとの情報がある。
・作業場所: 5mg/㎥
・周辺環境: 0.2mg/㎥
この基準を定めているのは、厚生労働省であるが、その厚生労働省のその根拠法令もしくは省令が、周辺環境の基準については見つかっていない。なお、粉塵の材質によっては、作業場所の粉塵量は、さらに厳しい基準が定められている。
この根拠基準が確認できれば、本センサの運用価値や運用法に広がりが得られると考えている。

技術的には、今回未装備の騒音計の装備に加え、システム全体の動作安定性確認や、電源動作の安定性向上が必要になる。また、量産性向上のための、機構設計見直しが必要になる。

FS実施後の状況、今後の展望

1)粉塵モニタ装置そのものの事業展開可能性
平成2年の国土交通省の統計では、新規住宅着工数は持家が261,088戸、借家が306,753戸、マンションが107,884戸、戸建て分譲が130,753戸だった。戸建て1戸を建築現場1か所とし、マンションを30戸につき建築現場1か所と仮定する。粉塵モニタ装置の装備を戸建ては現場1か所につき1台、マンションは1か所につき2台置くものとする。
同様に非居住建物は、11,374万㎡であるが、1万㎡につき4台設置することとする。
その前提条件の場合、年間に75万台の市場可能性があると想定される。1現場に3ヶ月の需要があるとすると、すべての工事現場を賄うには、18万台の装置が必要となる。装置単価を20万とし、装置寿命を10年とすると56億円の市場規模と算定される。

SIerとしてFS実施後の事業展開

本品を、大手レンタル機器会社の、西尾レントオールに紹介・提案している。
まだ製品化には改良が必要だが、製品化した後には、同社への供給も視野に活動を行う。

現地実証の結果、以下の問題が明らかになったので、改良の上でフィールド試験を重ねていく準備をしている。

  • ●LTE回線によるデータアップロードを行ったが、モバイルルータの内蔵電池の継続的な充電および動作が、装置の仕様上の問題で不十分となっていた。このため、モバイルルータへの電源供給電圧を上げて、計測的なデータ送出を可能にする。
  • ●太陽電池の発電能力が気象条件によっては不足しており、PVの能力を倍にする。

実証で用いた、「大阪市営 福第2団地」は工期が終わったため、ユーザ企業からは、大阪市福島の現場もしくは、富田林の現場を紹介されている。

その他の特記事項

●知財
簡易風向モニタに用いた風速センサHWS-19-ONEとHWS-19-DISには、1軸の風向検出機能を備えさせている。この風向検出に用いている技術について、特願2016-231556として特許出願していたが、本事業の実施期間中に、特許第6846025号として権利化した。

●試作品等の製作物

目的 粉塵モニタ
用途 工事現場における粉塵量の計測。
機能 粉塵センサ、振動センサ、風向風速センサを備え、内部にデータ保存すると並行して、サーバにデータ伝送する。
目的の達成度 機能評価試験を行うには、十分な機能を備えている。
一方で、製品にするには、改良が必要。
製作物の現状 実証試験を行ったあと、弊社で保管中。
次の実証試験に向けて改良を行っている。
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