FS事業(事業化可能性の調査)

複合的技術未開拓分野プロジェクト 事例

AI、IoT技術活用を得意としソリューションを提供するSIer企業の
「未開拓分野へ 複合的なAI・IoT技術の活用」をプロジェクトとして支援し、F/Sを行うことで、
変化を続ける産業構造に適応できる新たな導入モデル化を促進し、
導入ノウハウを蓄積・共有することを目的に生産性向上に取り組む中小企業を対象に実施しました。

農業/果菜類生産

実施概要

支援先中小企業のニーズ・課題

トマトやナスの栽培現場で、害虫として大きな問題となっているのが、コナジラミ類である。コナジラミは元々、外来生物で、この20年~30年で日本各地に生息域を広げてきている。コナジラミ類が作物に大きく被害を生じるのは、コナジラミ類がウィルス病のキャリア(運び屋)となり、温室やハウス内の植物にウィルス起因の病害を蔓延させることにある。特に、トマト黄化葉巻ウィルス(TYLCV: Tomato yellow leaf curl virus)による黄化葉巻病は、収量を大きく低下させるだけでなく、植物体自体の生育も大きく抑制される。一度発症すると治療法はなく、施設内の全株切り倒しが実施されることもある。このため、生産者にとって、コナジラミの施設内侵入および増殖は、経営体に大きなダメージを与える。なお、コナジラミ類自体も、農薬が効きにくく、さらに耐薬性を持つ変種も確認されている。
当該施設は、事業開始から約20年経過するが、当初はコナジラミ類が当該地域には広がっておらず、通年栽培が可能であった。しかし、年を経るにつれ、コナジラミ類の侵入が発生する様になり、施設内の蔓延を防ぐために周年栽培を停止し、夏季の栽培を行わない事で被害管理を行うようになり、収益性にも影響を与えている。なお、生産者が対応可能な手段は、週1回の農薬散布と、窓への防虫ネットの設置、虫取り粘着シート位しか対応策がない。
このため、コナジラミ類の効率的な防除法や、対処法が望まれている。

課題の解決方法

農薬を用いない音響防除装置を提案する。
コナジラミ類は、カメムシやセミの仲間であるため、音波に対して反応性を持つ。事実、オス・メスのペアリングの際には、オスとメスの間で、音波(もしくは振動波)によるコミュニケーションが行われることが明らかとなっており、その周波数は100~400Hzが用いられている。なお、コナジラミ類は、飛翔力は強くないものの飛翔し、風に乗ると4km程度は移動が可能であるが、一方で飢えには弱く、1日を超えて食を得られないと死滅する。
一方、音波は電子機器で制御可能で、薬剤に比べて迅速かつ広範囲に伝播する事が可能である。インターネットを経由すれば、音波データの配信や運転状況の把握が容易になり、地域における面的防除管理も可能になる。
そこで、
1) 害虫侵入防止
2) 施設内の移動(飛翔)抑制
3) 増殖(繁殖)抑制
の効果を期待し、音波による物理的防除を行う音響防除装置を設置し、コナジラミの被害防止に寄与する。

本装置の導入によって、以下のステップによる経営高度化に寄与する。
第1ステップ: コナジラミ類に対する予防防除効果による経営リスクの低減を図る。
第2ステップ: 農薬などの化学的防除への依存を減らす事で、防除人件費および農薬被ばくリスクの低減を図る。
第3ステップ: コナジラミ類への継続的効果を確認出来た所で、周年栽培の復活による経営安定化を図る。

なお、内閣府「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」事業により作成されたトマト地上部病害虫防除体系マニュアルには、以下の記載がある。
「日本植物防疫協会(2008)がまとめた、化学合成農薬を全く用いない場合のトマトにおける減収率は 36%であり、これは、トマトの市場価格に換算するとおよそ 1,500 億円の減収を化学農薬の頻繁な散布で補っていることを意味する。しかし、従来の殺虫剤のような化学合成農薬の連続散布による害虫の抵抗性発達を回避したり、環境負荷低減や生産者の軽労化のためには、これまでの化学合成農薬使用量を削減していくことが求められる。」
また、コナジラミ類による直接的な経済被害は数十億円を超えると見込まれており、本実証結果は日本全体に波及させられれば、減農薬や生産者の負担軽減だけでなく、経営体の経済性向上にも寄与し、また後継者不足が深刻な農業における担い手確保に寄与する事も出来る。

提案システムが実用化され、発展した場合に想定される活用法

FS実施内容

従来開発品は、回路上の欠損を持ち、改良が必要であった。主な改良点は、以下のとおり。

  • ● Ethernet通信回路の設計ミスによる、通信能力欠落の修正。
  • ● 表示回路の回路設計ミスによる、表示能力欠落の修正
  • ● 時計ICをクロック未調整タイプに変更
  • ● 割り込み入力ピンを最適化
  • ● 無線通信モジュールコネクタを再設計し、Wi-Fi、Wi-SUN FANなどへの対応が可能な様に変更
  • ● 音響出力回路の改良

また、内蔵プログラムは全面的に改良を施した。

この改良した音響防除機を、約1.8aの、アイリスファームしんぼ様のトマト栽培ハウスに設置する準備を整えた。
しかし、新型コロナの影響等により、半導体の入手に問題が生じ、改良品の準備に時間を要した事、およびコロナ禍の状況であるため、感染拡大防止の観点から、現地設置は実施できなかった。
設置準備は整えたため、今後、コロナの感染が落ち着くタイミングを見計らって、設置、実証を開始する。見通しとしては、7月~9月頃の運用開始を予定する。この時期は、次作の栽培開始時期と重なるため、作ごとの効果を確認するにはタイミングが良い。

また、既知の効果音はタバココナジラミの特定品種(バイオタイプB1)にしか効果が確認されておらず、さらに1種類しか見つかっていない。コナジラミは、主に3種が確認され、その中で複数のバイオタイプが見つかっており、さらに同一のバイオタイプ事にコミュニケーション音が異なっている事が明らかとなっている。つまり、種やバイオタイプが異なる場合、嫌気音の効果は期待できない。なお、現在見出されている効果音は、コナジラミの発信音をベースとしている。
このため、他の種にも有効で、かつ複数の嫌気音の探索・調査も行った。人工音を生成するプログラムを用いて50Hzから10kHzまでの音域を、連続的に周波数をかけてコナジラミの反応を確認した。また、パルス音を当てたり、パルス幅を変えるなど、の試験を行った。コナジラミの観察は、高倍率のマクロレンズを用い、4K動画で記録し、コナジラミの行動や反応を評価した。しかし、有効な効果音は現時点で見いだせていない。今後、効果音の探索および、効果音探索の効率化を図る必要があり、これにより、複数種・複数バイオタイプのコナジラミ対応を進め、さらにコナジラミ以外の昆虫への適用にもつなげていきたい。

一方で、生産者の期待は大きく、より多くのコナジラミ類に対応できれば、農薬散布の低減や、羅病リスクの低減、周年生産の再開などに繋げていけるので、経済効果への寄与が期待できる。

また、本装置の機能を補完する周辺技術の整備も行った。装置の動作モニタリングのためのモニタソフトの改良や、クラウド連携を見据えた通信試験の機会を研究機関から頂いたので、これを実施した。

モニタソフトの改良は、2年前に近畿大学の依頼の元で開発したUECS-GEARを対象とし、研究機関などでの先行使用で明らかになった改良点を改修している。
UECS-GEARの主な改良内容は以下の通り(Ver..1.1.0):

  • ● グラフ表示機能の改良
  • ● 成長予想機能の仕様変更
  • ● 使い勝手の向上

一方クラウド連携については、慶應義塾大学や農研機構からの要請で次世代IoT向けの通信規格の相互試験を目的としたIEEE1451 Plugfestに協力した。IEEE1451は、センサネットワークに関する標準化であり、拡張規格のIEEE P1451.1.6ではMQTTを用いる場合の規格策定がWGによって進められている。昨年の2020年10月に行われた、IEEE IECON2020での、IEEE1451 Plugfestでは、農業生産現場の現場情報をMQTTにより送付し、そのデータを使用してPlugfestでデモンストレーションも行われた。ホルトプランでは、現場情報をMQTTに変換して送出する部分を担当した。

得られた知見・成果ならびに事業化への課題

植物生産に被害を及ぼすコナジラミは、数種類確認されており、また形態学上は同一種とみなされているタバココナジラミも、遺伝学的には3種に分類できるとされている(バイオタイプ)。これは、バイオタイプ別に、コミュニケーションに使用している音が異なり、異なるバイオタイプ間での交配も実施されないことが確認されている事からも裏付けられている。さらに、音響防除法は、ほかの害虫種への拡大も期待されている。 現状は、防除効果の見込める効果音が、1種しか見つかっていない。対象種の、防除音への“慣れ“も考慮すると、1種に対して複数の効果音を見つけ出す事がふさわしい。この効果音を効率的に見出す方法を、今回試行したものの、まだ方法としては確立できていない。今後は、この効果音の探索を、効率よく行うことが求められていく。

FS実施後の状況、今後の展望

1)防除機そのものの事業展開可能性
コナジラミ類による被害額は、年間数十億円以上と見積もられている。また、コナジラミ類の被害は、日本だけでなく、世界各地で問題となっており、日本同様に施設栽培が盛んで、同程度の栽培面積を持つ韓国でも、コナジラミ類の被害が発生している。
日本の栽培施設面積は、およそ4.5万haであり、棟数はおよそ90万棟と推測される。このうちトマト栽培は、約16%の7,300haとなる。本品は、1台で5~10aの範囲を管理可能に設計してある。よって、市場規模は、国内のトマト生産施設だけでも、73,000台存在することになる。
なお、ターゲット価格は10万程度と考えており、スピーカ等のオプション品を加えて、1セット15万程度を目標としている。装置寿命は10年とする。このため市場規模は、約10.9億円/年と試算される。
なお、この数値は、普及率100%とした場合である。暖房機の普及率が42%であったり自動窓開閉装置の普及率が12%であることから、仮に10%の普及率であった場合でも、7,300台で1億円/年の市場規模が存在することになる。
しかし、本品には開発要素が残っており、その一つが嫌気音の探求効率化になる。従来は、栽培実験を行い、効果音の探求を行っていたが、結果が明らかになるまでに3ヶ月~1年の時間を要する。加えて、栽培管理やPCR検査等の遺伝子解析を伴う作業が必要なため、容易に実験区を組むことができない。農研機構等と協力し、今後、本件市販化に必要な研究開発を継続し、実用レベルを上げていく。

2)副次効果への期待
ここ数年、スマート農業による生産効率化に期待が高まっている。また、政府は次世代社会としてSociety5.0をキーワードに挙げており、大阪関西万博のキーワードになっている。さらに、菅首相の所信表明演説で公表された様に、2050年のカーボンニュートラル実現に向けた社会活動が求められてきている。
本品は、LANなどの通信能力を持ち、インターネットとの親和性も高い。このため、スマート農業機器の一つとなり得、またSociety5.0に対応するための能力を付与可能な設計としている。このため、産地での施設間連携動作や、地域の面的防除活動、消費者へのアピール情報源など、本品および本品の通信機能を用いた活用可能性が考えられる。
農林水産省は、脱炭素に向けた方針として、農業生産の化学薬品使用の低減を、手法の一つに挙げている。これは、薬品製造時に発生するGHGを、薬品使用を減らすことにより、間接的に減らす効果を期待しての事となる。本品は、化学農薬の使用を減らす効果も期待できる。従って、本品の利用により、間接的にGHG排出を減らし、脱炭素社会への実現に貢献できる可能性が期待できる。

SIerとしてFS実施後の事業展開

ホルトプランは、2021年度から、脱炭素社会実現のための、国の研究事業に参画する。NEDOの「NEDO先導研究プログラム/新技術先導研究プログラム」と、農林水産省の「脱炭素型農業実現のためのパイロット研究プロジェクト」に採択されている。

各プロジェクトの概要は、以下のとおり。

課題名 「農山漁村地域のRE100に資するVEMS開発」
中核機関 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
実施期間 2021年度~2022年度
参画機関 国研)農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)
農村工学研究部門(農工研)
農業技術革新工学研究センター(革新研)
国研)産業技術総合研究所再生可能エネルギー研究センター(FREA)
学校法人慶應義塾大学理工学部 西宏章研究室
学校法人早稲田大学創造理工学部 田辺新一研究室
国立大学法人東京大学生産技術研究所 
国立大学法人京都大学大学院工学研究科
三菱電機株式会社 先端技術総合研究所 ソリューション技術部
千葉エコ・エネルギー株式会社
ジオシステム株式会社
ホルトプラン合同会社
課題名 「脱炭素型農業実現のためのパイロット研究プロジェクト」
中核機関 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)
実施期間 2021年度~2025年度
参画機関 国研)農業・食品産業技術総合研究機構
農村工学研究部門(農工研)
中央農業研究センター
農業環境変動研究センター
畜産研究部門
北海道農業研究センター
国研)産業技術総合研究所センシングシステム研究センター 
学校法人慶應義塾大学理工学部 西宏章研究室
学校法人早稲田大学創造理工学部 田辺新一研究室
北海道立総合研究機構十勝農業試験場
栃木県農業試験場
ネポン株式会社
ホルトプラン合同会社

本課題で構築した基板および装置は、上記プロジェクトでも活用する予定である。

その他の特記事項

本事業期間中、本装置で用いた防除手法の研究(内閣府SIP第一期)が、以下の表彰を受けた。

SATテクノロジー・ショーケース 2021  ベスト異分野交流賞
 主催: つくばサイエンス・アカデミー(一般財団法人茨城県科学技術振興財団)
 受賞課題「音響を用いた農業害虫防除技術の開発 - 省力的で環境にも優しい防除を目指して -」

 久保田健嗣 農研機構中央農業研究センター
 水谷孝一  筑波大学システム情報系
 海老原格  筑波大学システム情報系
 宇賀博之  埼玉県農業技術研究センター
 林泰正   ホルトプラン合同会社
 石井雅久  農研機構農村工学研究部門

これを受けて、農研機構広報誌に紹介された。
 「農研機構技報 (NARO Technical Report) No. 8」

本課題の周囲技術として改良等を行った事項については、下記の通り。

・UECS-GEAR
CQ出版の「Interface」2021年1月号と2月号に、UECS-GEARの紹介記事が掲載された。

・IEEE 1451 MQTT
前述のとおり、IECON2021のPlugfestで活用された。なお、2021年の6月に京都で開催される、IEEEの研究大会で行われるPlugfestでもデモンストレーションが行われる。さらに、これを契機とし、スマート農業をターゲットとした国際標準化規格のWG開始が計画されている(名称は“IEEE P2992”の見込み)。

●試作品等の製作物

目的 音響防除機
用途 植物生産施設で、音響により害虫の行動管理を行う
機能 50W×2系統の音響出力機能と、2系統の光防除装置の制御能力を持つ。
Ethernetポートを備えており、LAN経由で環境制御システムとの情報共有が可能となっており、将来はこのLAN経由でインターネット上の、サーバとの連携が図れる。
目的の達成度 目的とした改良作業は達成した。
今後の長期動作試験で問題が出なければ、市販化可能。ただし、効果音の探求状況により上市時期が決まる。
製作物の現状 現地試験がコロナの影響により実証開始前であるため、SIer企業で保管・机上評価中
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