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vol.14〜「今、幸せですか?」人間とロボットが決定的に違うこと〜

読んでフムフム・見てフムフム2021.12.17

フムフムvol.14

世界幸福度ランキング、日本は56位。

今、「幸せ?」と聞かれたら、あなたはどう答えますか?

誰から・どんな状況で聞かれるかによって回答が変わりそうだし、「幸せ」の定義なんて人それぞれだと思うので、すぐに回答できない人の方が多いのかなぁと思うのですが、皆さんはいかがでしょうか。

ちなみに、国連が毎年発表している「世界幸福度ランキング」で、日本はいつも先進国の中では順位が低いというニュースを目にします。2021年の最新のランキングでは、フィンランドが4年連続1位で、日本は56位。最下位は149位のアフガニスタンでした。
この幸福度ランキングは、生活の満足度を判断して主観的に幸福度を調べる手法に加え、GDP・社会保障制度などの社会的支援・健康寿命・人生の自由度・他者への寛容さ・国への信頼度、の6項目などで調査されるそうです。GDPの高い日本がなぜ順位が低いのか、ということについては色々と考察記事が出ているので、興味ある方は調べてみてください。

と、このように普段あまり考えることのない「幸せ」について考えているのは、劇場アニメ「アイの歌声を聴かせて」で、「今、幸せ?」という言葉が何度も出てきたから。

「アイの歌声を聴かせて」(原作・脚本・監督:吉浦康裕、2021年)

「アイの歌声を聴かせて」は、AI開発の大手企業「星間エレクトロニクス」の実験都市(都市といっても長閑な田舎)を舞台に、景部高校に転校してきたシオンと、サトミたちクラスメイトが繰り広げるSF青春群像劇です。
シオンは、実はサトミのお母さんが開発したAIロボットで、「周囲(サトミも含む)にAIとバレずに高校生活を1週間過ごすことができるか」という秘密の実証実験のためにやってきたのでした。それにもかかわらずシオンは、なんの脈絡もなくサトミに幸せかと聞いたり、突然歌い出したりと、突拍子もない行動で周囲を驚かせます。

私はこのあまりのポンコツっぷりに、物語といえど実証実験の割に完成度低すぎやろ!とか、なんで急にミュージカル調で歌うねん!とか、ツッコミどころ満載で正直イライラしてしまったのだけれど、これが重要な伏線だったことに後々気づくことになります。

サトミやクラスメイトは、天真爛漫なシオンに振り回されながらも、サトミたちの幸せを考えて行動するシオンのおかげでそれぞれの悩みが解消され、仲良くなっていきます。そしてシオンはその過程で何度も「今、幸せ?」と、サトミに問いかけます。

シオンがサトミを幸せにするために行動している理由は最後に明かされるので、ぜひ映画を観ていただいたらと思いますが、一つの目的を達成するために純粋に真っ直ぐに行動するシオンは、とてもロボットらしく描かれています。嫌味を言われても意地悪されても、いつも明るく前向き。どんな状況でも楽しそうなハイトーンボイスは、たまにちょっと不気味さを感じるギリギリのラインといった感じ。

ロボットは目的を持って生まれてくる。では、人間は?

当たり前の話ですが、ロボットは目的に合わせて開発されます。掃除ロボットは、綺麗に掃除するという目的を達成するのに適した形と機能を備えており、工場で働くロボットも、コミュニケーションロボットも、みんなそれぞれの目的・用途に適した形と機能を持って生まれてきます。

お掃除ロボット

一方、人間はというと、特になんの目的も持たず、ただただこの世に産まれてきます。なにか一つの目的を達成するために生まれてきました!という人はいませんよね。

だからこそ生きていく過程で、「自分はこのために生まれてきたんだ!」とか、「この人のために生まれてきたんだ!」というものを見つけられる人は、幸せだと思うのです。

でも、そういうものが見つからなくても「自分はなんのために生まれてきたのか?」と悩む必要はなく、不幸でもない。だってわたしたちは、何かをするのに特化した機能を持っていないし、そもそも目的すら持たずに生まれてきたんだから。
それは見方を変えると、自分次第で何にでもなれる、ということ。自分で目的を設定したらそれに向かって生きていくことができるし、もちろん目的を変更することも、目的を決めないことも選択肢の一つだ。

私も入退院を繰り返していた時、「働くこともできず、なんのために生きてるんだろう」と思うこともあったけれど、今なら言える。なんてことはない。今をそのまま生きたらいいんだ。
ちなみにキリスト教では、「何のために生きているか」ではなく「なんのために生かされているか」と考えるそうです。そして人間は誰しも神様から「才能(Gift)」が与えられており、その才能は神様に感謝して活用しないといけないといいます。それも素敵な考えですよね。

さて、映画に話を戻すと、物語の終盤では、今度はサトミたちがシオンのために必死に行動します。そんな中、シオンの謎が解明されるシーンはなかなか圧巻で、最初のイライラは解消されました。よかった!
全体的に映像も音楽もキラキラしているのですが、AIの怖さもなんとなく漂っており、見る人の立場によっていろんな見方ができそうなお話でした。ツッコミながらみるもよし、ジュブナイル感を楽しむもよし、シオン役の土屋太鳳の歌を楽しむもよし。そして、自分の幸せを考えるのもよし。

最後に、私は今幸せかというと・・・美味しいごはんと暖かいふとんがあって、仕事があって、こんなふうに「幸せ」についてうだうだ考えられているのは、幸せな証拠なんだろうな、と思います!

アイの歌声を聴かせて

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