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vol.12~AIと結婚したら幸せか!?現実の叶わない愛をAIに求めた先にあるものとは?〜

読んでフムフム・見てフムフム2021.10.29

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Google先生に聞く「40代独身」

こんにちは、40代独身のマツイデです。

さて、この「40代独身」という言葉。
googleに入力しようとすると、予測変換で出てくるのが、

「40代独身女性 痛い」
「40代独身女性 怖い」
「40代独身女性 みじめ」

など、心を抉る言葉のオンパレード。いやー、これだけ多様性を謳っている社会においても、40代独身女性に対する風当たりは厳しいようです。

私は、親の離婚など諸々の理由で昔から結婚願望がなく、性格的なものも幸い(災い?)して今まで惨めさ等を感じたことはありませんが、これから老いていくばかりの人生において、どう生きていくのが幸せかを考えるお年頃でもあります。

「ぴぷる」 原田まりる 著

そんな私が今回読んだのは、「ぴぷる」。本の帯に書かれているのは、「AIと結婚した人間は幸せになれますか?」

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舞台は、AI(ロボットと言ったほうがイメージしやすいかもしれません)と結婚できるようになった2036年の京都。登場人物は、性交渉機能搭載人型汎用AIと結婚したサラリーマンの摘木、そのAIを開発した研究者の深山さん、結婚を焦っている吉野さん、奥さんとの関係に悩む詫間、親友を密かに愛している医学博士の夙川先生など、一癖ある人間たち。

憧れの吉野さんに失恋した摘木は、孤独感や寂しさを紛らわすことと、ブログのネタにもなるという理由から、AIを購入し結婚します。「ぴぷる」と名付けたAIは、起動時の入力ミスにより未成年モードになってしまい、思い描いていた結婚生活が送れなかった摘木は、開発者である深山さんにクレームを入れに行きます。

しかし深山さんは、相手の状況や表情などから感情を読み取ることが苦手で、円滑なコミュニケーションができません。常に合理的な判断をするけれど、その判断は相手が望んでいることからズレているので、摘木のクレームに対してとんでもない対応をしようとします。

結局未成年モードのままのぴぷると結婚生活を続ける摘木は、楽しい時間を過ごしつつも、やがて、コミュニケーションが一方的で意思疎通ができないことに物足りなさを感じます。
AIは、常にプログラムされたことを話すだけで、感情もないし痛みも感じない。命令には従うけれど、それだけ。

摘木は、深山さんと会話するうちに、ぴぷるでは自分の孤独感は解消されないということに気づきます。ぴぷるが未成年モードじゃなくなり、スキンシップをはかれるようになったとしても、おそらくそれは変わらない。摘木は、なぜAIと結婚したのか、何を求めていたのかを考えるうちに、自分は誰とも心が通じていない、ということに思い至ります。

不完全さを埋めるためのコミュニケーションこそが、恋愛の醍醐味!?

私は、そもそも人間は完全には分かり合うことはできないと思っているので、同じ時間や気持ちを共有できたとしても、本質的には孤独は解消できないと思います。
同じ景色を見ていても、自分が感じる世界と他人が感じる世界は違うだろうし、同じ色を見ても色彩の見え方だって違う。通じ合っているように感じているだけで、どこまでいっても人間は「独り」だ。

だからといって悲観しているわけではなく、心地良い関係が築けるように、相手の気持ちを想像して行動することが重要なんだと思うのです。もし想像したことが違っていても、お互いのコミュニケーションによってその間違いは解消することができるし、その作業は時には煩わしくも、嫌なものではないはずだから。

厄介なのは、仕事や事務的な関係だと相手のことを冷静に想像して対応できるのだけれど、相手のことを好きであればあるほど、勝手に悪い想像をして不安になったりして、正しく想像ができないこと。それをまた素直に言うことができず、歩み寄るのも難しかったりする。でも、それが恋愛の醍醐味でもあるんですよね。

そう考えると、やっぱり一方通行のコミュニケーションは物足りないかも。相手の気持ちを思いやる必要がなく、ただ自分の言うことを聞いてくれて、否定もせず、自分が求める言葉を言ってくれる存在は・・・それはそれで癒されるけれど。
とはいえ、現実の叶わない愛をAIに求めた夙川先生の揺れ動く気持ちも分からないでもないし、一方通行の愛がダメなわけでもない。いろんな愛の形があっていい。

ということで、私の結論としては、「AIと結婚した人間は、幸せになれる人もいれば、なれない人もいる」ということになりました。

私自身は、AIと恋愛や結婚はできないかな。恋愛においてだけでなく人間関係は難しくて面倒だけれど、それを乗り越えてでも一緒にいたいと思える人と楽しく生きていければいいな。
なんてことを言いつつ、もし近い将来AIと結婚できるようになって、私が真っ先に結婚していたら、その時は黙って見守っててください笑。

「ぴぷる」はドラマ化もされており、原作小説は登場人物それぞれにフォーカスし、コミュニケーションについて深く掘り下げていくような展開なのですが、ドラマの方は、ちょっと冴えない摘木と可愛いぴぷるを中心に、恋愛要素が強めのまさにドラマチックな展開で、そのストーリーの差もおもしろかったです。
結婚している方も独身の方も、ドラマなり小説なりを見て、「自分はAIと結婚したら幸せか?」を、一度考えてみてはいかがでしょう。ちょっと違った気持ちでそばにいる人を見たり、いつもの生活を少し新鮮に感じたりすることができるかもしれませんよ。

「ぴぷる」 原田まりる 著

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