介護ロボット・ICTシステム導入事例:社会福祉法人 善光会

自ら介護ロボット・ICTシステムの研究開発を実施。
そして、効果の見える化で利用者と現場の好循環を創出。

善光会は、2009年11月にロボットスーツHAL®を導入し、筑波大学、CYBERDYNE株式会社と共同研究の実施を行って以来、iPhone・iPadアプリの自社開発等、技術の発展に積極的に関与してきました。2013年8月に「介護ロボット研究室」を設置してからは、ロボットやIT、福祉機器等の研究・開発・導入など、大学や企業との共同研究などにも取り組み、メーカーや様々な団体とのパイプ役を担ってきました。その後、2016年7月には、「介護ロボット研究室」より人工知能を研究対象に追加し機能を拡張した「介護ロボット・人工知能研究室」を発足。2017年10月には、介護福祉施設としてはじめてシンクタンク機能を持った「サンタフェ総合研究所」を設立し、介護情報プラットフォームやアプリケーションの開発や、最先端機器を使いこなす人材「スマート介護士」の育成事業を進めています。

法人概要

・ 法人名称:社会福祉法人善光会
・ 本部所在地:東京都大田区東糀谷六丁目4番17号
・ 設立:2005年12月7日
・ HP: https://www.zenkoukai.jp

導入している介護ロボット・ICTシステム
・ロボットスーツHAL®福祉用(サイバーダイン社)などこれまでに130種類以上を導入
・現在は、眠りSCAN(パラマウントベッド株式会社)
・シルエット見守りセンサ(キング通信工業株式会社)
・HUG(株式会社FUJI)
・D Free(トリプル・ダブリュー・ジャパン)
など、20種類以上の介護ロボットが稼働(導入事例は130種類以上)

導入したきっかけ

設立当初の理念の確実な実践

  • ● 法人設立時より、「オペレーションの模範となる」「業界の行く末を担う先導者になる」という理念を持っており、業界に先例のないことも積極的に取り組んでおられるのが同法人の特色です。
  • ● 介護業界の人員不足は深刻であり、このままの人員配置を継続することが難しいと考えた同法人は、先端技術を活用したオペレーションを推進。最初の導入機器であるロボットスーツHAL®福祉用(サイバーダイン社)をはじめ多くの機器は、メディア等でその存在を知った現場職員から使ってみたいと声が上がったことがきっかけで導入しています。

導入にあたっての課題や解決方法、工夫点など

チームを作り横連携で導入を検討

  • ● 導入にあたっては、介護ロボット・人工知能研究室やサンタフェ総合研究所、施設の施設長やユニットリーダー、介護職等現場職員でチームを作り、職域横断で検討されています。効果的に機器を利用するためには、“誰が・いつ・どこで・どの機器を利用するか”を決める必要があり、それらの計画を決めるため、導入前に介護オペレーションや利用者の特性をしっかりと分析されています。そして、実際の運用に関しては、介護現場のスタッフに対しては、主にユニットリーダーが使い方などを教え、全員が使えるようにトレーニングを行っています。
  • ● 導入機器については、使い方をオペレーションから考えることが重要であるという考えから、HALを導入する際も、施設でさらに使いやすいものとするため、筑波大学・サイバーダイン社と共同研究を行い、ソフト面の監修や可動域の検討などを行ったそうです。そうすると、2軸しか動かないため縦方向のサポートしかできなかったり、着け外しに時間がかかるなどのHALの特性から、歩行サポートよりもリハビリに活用できるなどの発見もあったということです。また、その実績をもとに様々なメーカーから共同研究や共同開発の話が多く来るようになり、今のような研究活動につながっています。

導入後の効果やスタッフの変化

効果の見える化で職員のモチベーションもアップ

  • ● 導入した介護ロボットについては、様々なウェアラブルデバイスを活用し、導入効果を測定。効果事例の1つとして、夜間にベッドからの転落や転倒リスクが高い方に適用しているシルエット見守りセンサ(キング通信工業)は、従来はセンサが発報したときに居室に駆けつけていたところ、同製品では、シルエット映像を確認できるため、今すぐに訪室の必要があるのはどこかなど優先順位付けができるようになったということです。また、不要な訪問で睡眠を阻害することがなくなったため、入居者の睡眠効率の上昇にも繋がっているようです。
  • ● 排泄予測デバイス「D Free」(トリプル・ダブリュー・ジャパン)は、失禁リスクのある方に使用することで、無駄なトイレ誘導が減り、着脱に少し時間がかかるものの、効率化に繋がっているとのことです。また、排泄のタイミングが把握できたり、頻尿の方の排尿トレーニングにも有効だったそうです。
  • ● 以上のような積み重ねにより、入居者の生活変化が見える化されケアの効果を実感できるため、職員のモチベーション向上にも繋がっているということです。

介護施設へ導入するポイント

経営視点と現場視点を分けて考える

  • ● 経営者の視点からは、導入が本当に必要か、その機器を使用することでコストはどうなるか、オペレーションはどうなるかなど、事業計画から見極める必要があるとのことです。
  • ● 一方で、介護現場については、この機器を使うとどんな効果があるか、いかに業務が楽になるかを理解するまで説明する必要があるとのことです。

今後の展望

スマート介護士やプラットフォーム・アプリなど独自の取り組みを推進

  • ① スマート介護士
    善光会では、2019年3月に、新しい介護資格「スマート介護士」を創設し、これからますます需要が高くなる介護ロボットや機器を組み込んだ介護サービスを導入し、効果的・効率的に提供できる次世代介護士の育成に取り組まれています。社内資格で始めた「スマート介護士」を全国に広めることで、介護士の不足や増え続ける要介護者といった課題の解決につなげていきたいとのことです。
  • ② Smart Care Operating Platform「SCOP」
    見守りシステムなどの介護機器はどれもスマートフォンで操作するものが多いが、どれも個別のアプリで動き、それぞれのアプリに干渉しないようにそれぞれに対応した端末で動かすことが推奨されていいます。しかし、介護士にとって複数の端末を持つことやそれぞれの使い方を覚えることが負担となり、共通基盤がないことが介護ロボットや最先端機器の普及を妨げる一因となっています。そこで、善光会では、複数の介護ロボットを集約的にモニタリング・コントロールできるアプリ「SCOP now」を開発されています。またそれだけでなく、現役の介護士たちが、現場が求める要素を網羅した介護記録アプリ「SCOP Home」を設計し、2019年12月にβ版の無償提供を開始しました。今後も、そういった取り組みを継続していきたいとのことです。